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第3回 クロスセミナー2024
~企業進化の最前線:真の変革ドライバーが導く新たな改革アプローチ~
2024年12月3日開催の第3回クロスセミナーにご参加いただきありがとうございました。
後記として、エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社様、スター精密様のトークセッション内容をまとめました。
エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社(以下AWPC)の紫垣様より「SaaS型ERP導入によるチェンジマネジメント」というタイトルで、成功裏に完了したERP導入プロジェクトに関してご報告いただきました。
プロジェクトマネージャーを務めた紫垣様は、「私たちが目指したのは、従業員が働き甲斐を持って働ける会社にしていくこと」と語っていただいた通り、本プロジェクトは単なるシステム導入プロジェクトではなく、全社的な業務改革推進しクリエイティブな業務に専念できる体制整備を目指したものでした。
トークセッションハイライト
■明確な目的と強力なリーダーシップ
プロジェクトは以下の3つの目的を掲げました:
1. 経営の合理化を促進する資源統合
2. 継続的な業務プロセス改革を実現する基盤づくり
3. デジタル技術を活用した組織カルチャーの変革
この目的を実現するため、紫垣様は、「ERP導入を目的化しない」ことを徹底し、チーム全員で「あるべき姿」を描き、課題を共有することからプロジェクトをスタートさせました。また、アドオン開発の増大による将来的なベンダー依存を防ぐため、候補となった複数のベンダーに対して自社の業務プロセスに合わせた有償でのデモを依頼し、比較検討をしたうえで適合度の高いシステムを選定しました。

■困難を乗り越えるリーダーシップと現場重視のアプローチ
プロジェクトは、各部署から約80名の社員が集結しましたが、合併後間もない開始であったため、会社全体で三社の業務統合作業の繁忙感が強く、また、統合作業と並行して行っているためプロジェクトメンバーの専任化ができず、プロジェクトへの参加にばらつきが発生するなどの問題がおこりました。
これに対し、紫垣様は「プロジェクトの主役はメンバー一人ひとり」という思いから各拠点を自ら訪問し、チームメンバーと直接顔を合わせて対話を重ね、習熟度の把握と信頼関係の構築に尽力しベンダーも含めたプロジェクトメンバーへの支援体制を整備しました。


■全社を巻き込む改革の仕組み作り
AWPCでは、システム導入で実現を目指す改革目標を業務ごとに作成し「改革目標発表会」を開催して全社員の理解を深める取り組みをおこないました。また、社員が自主的に学べるよう、IT教育資料や用語集を集約した学習ツールを導入。さらに、複数拠点に分散し、かつ、1つの会議への参加者が多かったため会議は全てリモートで実施しましたが、リモート体制を支えるためMicrosoft Teamsを活用し、ベンダーも含めたチーム間での質疑や作成した資料を誰もが見えるようにしました。

■プロジェクトの成果と今後への展望
新システムは、当初の予定より3カ月遅延したものの、この遅延を好機ととらえて例外処理等の細かなテストの実施や余裕を持った業務マニュアルの作成とユーザトレーニングの実施を通じて個人別のスキル管理を行い、最終的にはスムーズに稼働させることができました。稼働後、紫垣様曰く「本稼働後に特に大きな問題が発生せずにむしろ大丈夫かと感じた」と思われたほど、準備の徹底が成功の大きな要因となりました。

紫垣様は、「基幹システム導入はゴールではなく、次なるステップの始まり」と強調しています。
今後は、今回導入したシステムを最大限活用しつつ、さらなる業務効率化やデジタルトランスフォーメーションを推進していく計画です。全社規模で「あるべき姿」を描き、ギャップを埋めることで、よりクリエイティブな業務に専念できる体制を構築することを目指します。
■プロジェクトが示す成功の鍵
本プロジェクトが示した成功の鍵は、「参加メンバーが納得できる計画」、「トップによる率先垂範」、「組織の規律」の3つです。「計画の目的が明確で、経営資源の投入が具体的であれば、メンバーはやらされ感ではなく、主体的に取り組むようになります。そして、トップが自らの役割を果たし、行動で示すことが何よりも重要です」と紫垣様が会場の皆様に語られました。

また、今回のプロジェクトは単なる業務改革ではなく、人材育成の場としても大きな意義を持ちました。「座学だけではなく実践の場で自分を磨き上げ、“視座を高めて、視野を広げて、視点を鍛える”OJTで次世代を担うリーダーを育てていく。これは全ての企業に共通する課題だと思います」と結びました。
学びと振り返り
組織変革のプロジェクトにおいては、明確なリーダーシップと全社を巻き込む支援体制が成功の鍵であったことが本プロジェクトの成果が示しています。変革を推進する全ての企業にとって貴重な事例となるセミナーとなりました。
スター精密株式会社、経営企画室長の三浦様より「つながる・わかる・考えるが生み出すPDCA・コミュニケーション強化~中長期経営目標達成のための戦略マップとKPI活用~」というタイトルで現在推進中の経営管理の仕組み見直しの取組みに関してご紹介いただきました。
スター精密様は、内外の大きな環境変化を受けて、2022年に長期ビジョンを打ち立てられました。
打ち立てた長期ビジョンを踏まえ、組織の戦略課題や目標へ落とし込み、継続的にPDCAを回す経営管理の仕組みを構築する、これが本取組みの概要となります。

トークセッションハイライト
■目標設定面
(1)戦略マップとKPIを活用することで、”つながる状態”、”わかる状態”を創り出す
(2)組織階層間・組織間で議論を重ねることで”考える状態”を創り出す
■運用面
(3)全ての組織階層の理解浸透のために粘り強くアプローチすることで、KPIマネジメントの”共通言語化”を図る
以下、3点について補足いたします。
(1)戦略マップとKPIを活用することで、”つながる状態”、”わかる状態”を創り出す
これまで運用されていた経営管理の仕組みでは、中長期と単年度という時間軸でのつながりや、財務目標と部門目標・施策のつながりが弱いこと、各部門の目標・施策において狙う成果の定量化や重要施策の具体化が不足していることが課題でした。
この点を解消するために、新たな目標設定の枠組みとして事業部レベルの目標設定に戦略マップを、部・室レベルの目標設定にKPIマネジメントの手法を活用されました。
戦略マップにより、事業における中長期の戦略課題を、財務目標を起点に構造的に整理することで、中長期目標と単年度目標、そして財務目標と部門目標が”つながる状態”を創り出されました。
また、KPIマネジメントの手法を活用することで、狙う成果であるKGI(目標指標)、成果を出すためのCSF(重要施策)、重要施策を進捗管理するためのKPI(管理指標)を明確にされ、何をどこまでやるかが”わかる状態”を創り出されました。

(2)組織階層間・組織間で議論を重ねることで”考える状態”を創り出す
これまで運用されていた経営管理の仕組みでは、目標設定が上から下へ一方通行かつ実行者である管理職層が十分に目標・施策を考える時間も確保されていませんでした。
この点を解消するために、戦略マップとKPIという枠組みを活用して、組織階層間・組織間で議論を重ねる取組みをなされました。
具体的には、以下の通りです。
Step1 中長期の課題:部長・室長で議論
Step2 戦略マップの策定:中長期の課題を基に、事業部長・部長で議論
Step3 KGI・CSF・KPIを具体化:策定した戦略マップを基に、各部へ割り振られた戦略課題に対して部長・室長で議論
そして部門間調整が必要なテーマは関連する管理職が集まり全体最適の視点で議論を行うといった流れです。
その結果、多方向のコミュニケーション(事業部長⇔部長、部長⇔室長、部門⇔部門)及び目的・ゴールと施策の行き来を重ねられ、実行者である管理職層が能動的に”考える状態”を創り出されました。

(3)全ての組織階層の理解浸透のために粘り強くアプローチすることで、KPIマネジメントの”共通言語化”を図る
(1)(2)により、従来よりも中長期目線で納得感のある目標設定に改善されましたが、新たなマネジメントを組織に浸透・定着させるためには、「導入後が勝負」として、全ての組織階層に対して啓蒙活動を実践されています。
例えば、経営層への研修であったり、各組織の振返りセッションや各組織の戦略マップやKPI修正を支援したり、組織員の理解を深めるための解説動画を作成したりなど、多面的かつ継続的にアプローチをされているとのことでした。
三浦様は、「風化させない、形骸化させないためには、導入後早期にKPIマネジメントの共通言語化を図ることが重要」と語っていました。
粘り強い啓蒙活動の実践により、徐々に組織内での共通言語化が進んできているとのことです。

以上のポイントを踏まえ取組みを進めることで、組織のコミュニケーション活性化や、PDCA強化を図り、最終的には中長期経営目標達成のために自律性とこだわりを持つ組織創りに繋げることを目指され、現在も取組みを推進されております。

学びと振り返り
伴走させていただいているコンサルタントとしての所感を述べさせていただきます。
本取組みの特徴は、枠組み・手法といったハードの側面のみならず、人・組織といったソフトの側面に粘り強くアプローチされていることにあると感じます。
多くの企業にてKPIの組織展開等は進められていますが、どれだけ目標・施策が連鎖し具体化されても、実行する管理職層の方々の納得感や腹落ちがなければマネジメントは機能しないと考えます。
管理職層が能動的に考える状態を創り出すことで、与えられた目標ではなく、自ら達成すべきと思える目標へ実質的に変えていく、このことに粘り強く向き合わせているのがスター精密様の取組みです。
●エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社様 講演後記:アットストリームコンサルティング株式会社 伊藤 学
●スター精密株式会社様 講演後記:アットストリームパートナーズ合同会社 浅井 法寿

日頃お世話になっておりますお客様やアライアンスパートナーの皆様に感謝の意を込め、さらなる知見共有と情報交換の場として今年もクロスセミナーを開催いたします。
本セミナーでは、変革プロジェクトを率いるビジネスリーダーの方々に、企業が直面する課題やそれを乗り越えるための知見や工夫を共有いただきます。
“ Xross ”には、お客様・アライアンスパートナー様間での交流・懇親・コラボレーションの会合主旨と、
それらが無限に拡がり新たな刺激・発見につながっていきますように、との想いを込めています。
2022年より毎年、東京と大阪で交互に開催をいたしておりますが、今年は大阪での開催となります。
なお、収容人数の関係上、2024年もご招待制での開催としております。
参加者の皆様にとって有意義な時間となるように弊社メンバー一同準備いたします。是非ご参加の程、よろしくお願い申し上げます。
※クロスセミナー(旧名 プロセスイノベーションセミナー)とは?
皆さまの日頃のご愛顧に感謝し、2002年より年末に開催しているアットストリームグループ主催のセミナー・懇親会です。前回の様子はこちらをご覧ください。
■16:35~17:05 トークセッション(1)
SaaS型ERP導入によるチェンジマネジメント ~三社合併後の業務統合と変革~

エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社
業務改革担当
紫垣 浩一 様
マルチテナント型SaaSのERP導入プロジェクトを成功に導いた勘所や、導入した基盤をベースに今後の業務改善やDX化推進をセッション方式でご紹介。
■17:05~17:35 トークセッション(2)
つながる(連鎖性)・わかる(見える化)・考える(仮説検証) が生み出すPDCA・コミュニケーション強化
~中長期の経営目標達成のための戦略マップとKPIの 活用~

スター精密株式会社
コーポレート本部 経営企画室長
三浦 怜 様
中長期の経営目標達成のためのマネジメント改革の取組みをセッション方式でご紹介。(戦略マップの策定、KPIマネジメントの導入・定着を通じたPDCAの強化)
■17:35~18:05 基調講演
DX時代に打ち勝つための経営とITの連携

NPO法人 CIO Lounge
理事長
矢島 孝應 様
社会環境変化により加速した様に感じている日本のIT化、しかし世界のデジタル競争力ランキングは毎年落ちている。従来の企業組織構造によるIT/デジタル化推進では企業の真のDXは進まない。ICTの本質を今一度解きほぐし、企業がIT/デジタル化を加速する為の課題を示し、どの様に進めていかなければならないかについて、自身の数社でのCIO経験とNPO法人として多くの企業への対応を通じ得た現場感覚に基づいた内容をご説明。
■18:30~20:00 懇親会(参加者同士の交流や情報交換)
・立食ビュッフェ
・お楽しみ抽選会
【開催要綱】
開催日程 | 2024/12/3(火) 16:30〜20:00(開場 16:00) |
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会場 | 〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波5丁目1−60 スイスホテル南海大阪 8F 「浪速」Tel: 06-6646-1111 https://swissotelnankaiosaka.jp/access/ セミナー16:30~18:10 懇親会18:30~20:00 |
アクセス | 南海なんば駅直結、大阪メトロ御堂筋線なんば駅南南改札4番出口すぐ |
申込方法 | 募集期間が終了したため、申し込みを締め切らせていただきました。 https://atstream.seminarone.com/xseminar2024/event <申込から当日までの流れ>
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参加費 | 無料(招待制) |
形式 | セミナー:スクールスタイル 懇親会:立食スタイル(ビュッフェ) |
当日受付 | QRコードを専用の読み取り機にかざすかスタッフに提示ください。 |
持参物 | ネームホルダーをお渡ししますのでお名刺をご持参ください。 |
案内状 | 2024年12月3日クロスセミナー開催要領(PDF) |